2005年 12月 30日 ( 1 )

男たちの大和 YAMATO

f0011272_746369.jpg今年は戦後60年。
各メディアでは色々な特集が組まれているが、NHKBS2で放送中のドキュメンタリー「あの日昭和20年の記憶」、ドラマ「日本のシンドラー杉原千畝物語・六千人の命のビザ(よみうり系)」「実録・小野田少尉 遅すぎた帰還(フジテレビ系)」「広島 昭和20年8月6日(TBS系)」「終りに見た街(TBS系)」などなど、色々と観た。
なかでも「あの日昭和20年の記憶」は著名人の実体験が非常に生々しく語られる。もう半世紀も前のことだが、間違いなくそれは起こった事であり、日本の歴史始まって以来の国難だったのだということが伝わってくる。
さて、僕の中では「男たちの大和」は一連の戦争ものでは大本命だった。
戦艦大和に関しては様々な本で語られているし、過去の邦画でも大和が登場することはあった。
「戦艦大和ノ最期」では、大和の出撃から撃沈にたるまでが克明に記されており、油や火薬、血の匂いがしてくるほどの生々しい描写があった(この作品は著者が体験した実話ということであるが、内容の一部の真偽について議論がある)。
原作は違うが、その血と油と硝煙の匂い、特攻出撃に赴く兵士たちの思いを映像化されるのなら、期待したいと思った。

監督は佐藤純彌。「新幹線大爆破」「おろしや国酔夢譚」は観た。
水準の映画を撮る監督だとは思うが「北京原人~」のよからぬ評判を聞いて、ちょっと心配だった。

平日のレイトショーで、客の入りは2割ほど。男が8割。
語り口は奇をてらわないオーソドックスなもの。大和機銃兵の生き残り内田守(中村獅童)の養女(鈴木京香)が、戦後60年、亡き父の遺骨を大和の沈没した海に撒きたいと鹿児島を訪れたところから始まる。
彼女を小さな漁船に乗せて沈没地点に案内するのは、同じく生き残りの特年兵神尾克己(仲代達矢)。
彼の回想という形で物語は戦時中の日本へ。司令官や政治家よりも一兵卒の視点から物語が進むので、訓練や艦内の生活が克明に描かれる。
広島弁や当時の風俗を再現した美術はさすが邦画、安心して観れる(日本ネタの洋画でめちゃくちゃな日本を見せられてちょっと辟易していた)。
戦況が日に日に悪化し、連合艦隊は壊滅、沖縄に米軍が迫るに至って、勝算のない沖縄特攻出撃が大和に命ぜられる。
故郷に恋人を残すものあり、母との別れあり、友情ありと、人間ドラマが丁寧に描かれる。
ただ、上映時間の関係かそれらがひとつの流れにならずに唐突に切り替わるのが残念。
「バンド・オブ・ブラザース」や「U・ボート」のTV放映版のように時間がたっぷりあればもっと時代背景から太平洋戦争における大和の位置、そして彼らの生き様を見せられたと思う。
結局上映時間に詰め込むためにナレーションや図解を多用して説明を加えなければならなくなり、熱い人間ドラマとのバランスがちぐはぐになってしまったように感じる。
DVD化にあたって、ディレクターズカット版をつくてもらってそのあたりを補って欲しい(エンディングを観ると、カットされたシーンがかなりあるようだ)。
物語のクライマックスは九州沖の米軍機との死闘である。
製作費20億円という邦画では破格の製作予算、しかしそれでも予算が足りなかったのか、センスが無いのか、最大の見せ場、大和と、最期の戦闘シーンはもうひとつ。大和を捉える画はいつも左舷からばかり。海面を切り裂いて進んでいく大和の重量感や巨大さが伝わって来ない。また、飛行機の機動があまりにも現実離れしている。雷撃機がどのような動きで大和に攻撃を仕掛けたのか、資料なら沢山残っている筈。それなのに昔懐かしいUコンの如くくるりくるりと玩具のように旋回するだけ。30年前の糸釣り特撮レベルから全く進歩が無い。なんとか編集で誤魔化しているようだったが、今の観客はハリウッド映画の最新VFXで目が肥えている。もうすこし頑張って欲しかった。
とはいえ、これは観て絶対に損は無い映画とお勧め出来る。

みんなのシネマレビュー
公式ページ
[PR]
by waldo_pepper | 2005-12-30 06:03 | 映画の感想