リドリー・スコット監督「ブラック・レイン」デジタル・リマスター版DVDを購入。
メイキングとコメンタリーが入っているので、映画自体はそれほどでもないのだが買ってみた。 以下監督のコメンタリーやメイキングなどから興味深いことを。 ・当初ロケは東京で行う予定だったが、東京都が撮影に非協力的だったので、大阪府知事と交渉すると、快諾された。 大阪は日本一の都市は東京でなく大阪だと思っていて、東京にライバル意識があるらしい。 ・府庁や大阪府警などの建物、魚市場などを使う予定だったが、マスコミが公共の建物を私企業に貸すのかと報道したため、当局が態度を急変。撮影時間を大幅に短縮されてしまった。 ・魚市場での撮影は二日借りる予定が24時間しか貸せないと言われ、時間いっぱい一睡もせず撮影を続けた。 ・アンディ・ガルシアが駅のロビーでコートを奪われるシーン(JRのどこかの駅)はたった45分しか撮影時間がなかった。 45分ではセッティングだけで終わってしまうため、照明を一本だけ立てて、撮影した。 ・道頓堀など屋外撮影では警察などから人員整理などの協力がいっさい得られなかった。 撮影が始まると野次馬が押し寄せて大混乱になった。 ・日本はどこで撮影するにも当局の許可が必要で、詳細な計画書を提出しなかればならない。 照明の位置や、カメラの向ける方向などを事前に申請しなければならなかった。 実際のロケでは、現場に行かないと照明もカメラ位置も決められないので、想像して書いた。(撮影監督ヤン・デ・ボン) ・京都でのロケで、高倉健が街を歩くシーンは、彼がスーパースター故あっという間に皆に気づかれてしまうため、皆が気づくまでの数秒を狙って撮影、その後高倉健を車に押し込んで脱出した。マイケル・ダグラスは当時まだ日本ではあまり知られていなかったため、楽だった。 ・日本では日本人スタッフとの共同作業だったが、仕事の進め方が全く違うために、大変苦労した。出資しているのは我々なのだ。 ・その後北海道でのロケなどを計画していたが、冬が近づいていることや、日本でのロケ費用が高額なため、断念して北米で撮影した。 ・松田優作は撮影中も元気で、彼ががんに冒されているとは本人も言わないし、ほかの誰も気づかなかった。日本ではがんを患っても隠すらしい。恥の文化がそうさせるのか。 ・高倉健は役柄そのままの誠実な人物だった。彼はどこかの本人が所有する小さな島に住んでいるらしい。 ・ガッツ石松は元ボクサーだったという。彼を選んだのはマイク・タイソンに顔が似ているからだが、演技も素晴らしかった。 ・若山富三郎演じるやくざのボスの邸宅は北米にある有名な建築家設計の家で、「ブレードランナー」でも使った場所だ。 その他にも興味深い話がたくさんあった。 もう20年近く経っているが、スコット監督はどのカットも詳細に記憶していた。彼のコメンタリーはほかの彼の作品でもあるが、具体的で論理的でおもしろい。 また、日本や日本の文化、当時の社会状況についてもかなり正確に認識しているようで驚いた。やはりリサーチをしっかりしたのだろう。 また、自分はケルト人でアメリカ人とも違い、社交的な人間ではないし物事を一歩引いてみるようにしているが、日本人を見ていると、共通点を感じるとも言っていた。 また、映画監督の仕事は楽しい楽しいと言う。よっぽどこの仕事が好きなのだろうと思う。 日本でのロケでの苦労話だが、今のようにフィルムコミッションのような組織もないし、受け入れ地としてロケーションに使われることによって得られる知名度アップや観光などの利益についても理解が低かったので仕方ないと思うが、ちょっとかわいそうではある。 当時僕は大阪に住んでいたのだが、ロケ隊が府庁舍でスモークを炊きすぎて火災報知器が作動し、消防車が駆けつけて「大ひんしゅく」などと批判的に新聞記事が載っていたりした。 マイケル・ダグラスは、今まで出演した映画の中で一番は何かと聞かれたら、本作を挙げると言っていたが、リップサービスかな。 また、松田優作が急逝したことについてはかなりショックだったようで、今でも彼のことを思い出すと言っていた。 実際彼は撮影時には末期の膀胱ガンで、薬を飲みながら続けていたらしい。もちろんそのことは誰にも言わなかった。 彼が生きていれば、ハリウッドでの次回作にロバート・デニーロとの共演作も予定されていたという。 「ブラック・レイン」
by waldo_pepper
| 2006-11-19 06:03
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